考えてみれば、わたし。
　森下くんと仲良くなりたいと頑張っていた頃は、緊張してなかなか声をかけられなかったのに、今日は意識せずに普通に森下くんを呼び止めることができた。
　絵里のためだったから。
　緊張なんて、ぜんぜんしなかった。

　ぴこんと、ふたたびスマホが鳴る。

“がんばれよ”
　と、颯ちゃんからの返信。
“がんばれないって思ったときは、愚痴でもなんでも聞くから”……って。

　颯ちゃんは、優しい。
　優しいから、わたし……、また今日みたいに甘えてしまうかも。

「ありがとう」のスタンプを送ったあと、わたしはしばらく、手の中のスマホを見ていた。

　いくら幼なじみだからって、頼りすぎたら、きっと颯ちゃんの負担になる。

　今日だって、わたしに何かを言いかけていた。
　だけど結局なにも言わず、続きの言葉を飲み込んでしまっていた。

　前も思ったけど、颯ちゃん、やっぱり、だれかに聞いてほしい悩みや弱音が、あるのかもしれない。

　そんなことを考えているうちに、自分のことが情けなくなってきた。
　自分が頼るばっかりで、颯ちゃんのこと、何も思いやれていなかった。

　わたしは颯ちゃんに、

”颯ちゃんこそ、わたしに愚痴りたいことがあったら、何でも言ってね“
“悩みがあったら打ち明けてね。頼りないわたしだけど、力になりたいから”

　と、メッセージを送った。

　すぐに既読がつく。

　深夜まで寝付けずにスマホを気にしていたけど、颯ちゃんからの返信は、なかった。