あわてて制服のポケットからハンドタオルを取り出して、目元を押さえる。
 だけど、目頭がじんと熱くて、涙はどんどんあふれてきて、止まらない。

「ご、ごめん」
「なんで謝るんだよ」
「だって」
「泣けばいいじゃん」
「だって……っ」
「いいから。気が済むまで泣けよ」

 颯ちゃんは、わたしの腕をとって、ぐいっと引き寄せた。
 そのままわたしは、颯ちゃんの胸の中に吸い込まれる。

「…………っ」

 颯ちゃんの大きな手が、わたしの後頭部をぽんぽんと撫でた。

「我慢するな」

「…………うん」

 わたしは颯ちゃんの腕の中で泣いた。
 流れる涙が颯ちゃんのカッターシャツを濡らしていく。
 颯ちゃんの心臓の音が、すぐ近くで響いている。

「由奈」

 颯ちゃんがわたしをぎゅっと抱きしめる。

 苦しくて、かあっと顔が熱くなって、何かに必死にしがみついていたくなって。
 わたしも颯ちゃんの背中に手を回して、きゅっと、シャツをつかんだ。

 わたし、いま、どうしてこんなことに……。

 泣きすぎたせいで頭がぼうっとする。

「由奈、おれ」

 颯ちゃんの声が、すぐそばで、切なげな熱を持って響く。
 心臓が、にわかにどきどき早鐘を打ち始めた。

「おれ……」

 颯ちゃん……?

 何かを言いかけた颯ちゃんは、だけど続きの言葉は口にせず、そのまま、わたしをそっと引き離した。

「ごめん、由奈」
「う、うん……」

 べたべたの泣き顔を見られることも、小さい子どもみたいにしがみついてしまったことも恥ずかしくて、わたしはうつむいた。

 鼓動が、いつまでも治まらない。