颯ちゃんも、何も言わずロールケーキを食べている。
 なんとなく訪れてしまった沈黙を埋めるように、わたしと颯ちゃんは、もくもくとスイーツを食べた。

「ごちそうさまでした」

 小さくつぶやくと、わたしは、ごみを片付けてペットボトルの紅茶を飲んだ。

「ドーナツいっこじゃ、足りないなあ」
「じゃ、ホールケーキでも買って帰るか?」
「そうしたいところだけど、太りそうだからやめとく」

 ゆっくりと、ブランコを漕ぐ。

「失恋してやけ食いした挙句太るとか、あまりにも悲しいじゃん」

 冗談めかして言ったつもりだった。
 だけど颯ちゃんは笑わなかった。たしかに、冗談にしては痛々しすぎるよね。

「森下と吉井、付き合うのか?」

 すぱっと、颯ちゃんは直球で切り込んだ。

「うん。だって両想いだもん、あのふたり。お似合いだよね」

「……平気か?」

「平気だよ」

 即答すると、わたしはブランコから降りた。