昼休みが終わり、教室に戻ったわたしは、絵里の姿を目で追っていた。

 から突っぱねたんだ、わたしからもう一度話しかけなきゃ。
 でも……。勇気がない。

 5時間目の日本史の時間、板書を写すふりをして、わたしはルーズリーフに絵里への手紙を書き始めた。

 ごめんね、って。
 ショックで、ついあんなことを言ってしまった、って。
 わたしのことはいいから、自分の気持ちに素直になってね、って。

 そして、一番大切なこと。

 これからも、絵里の親友でいたいよ、……って。

 書き終えて、リーズリーフをきれいに折りたたむ。
 可愛い封筒でもあれば入れたいところだったけど、あいにく持っていなかった。

 恰好悪いけど、大事なのは中身だから。
 気持ちが伝わることが大事だから。


 5時間目が終わって、渡そうとしたけれど、勇気が出なかった。
 しかも絵里は、わたしがもたもたしている間に、先生に用事を頼まれて教室の外に出て行ってしまったし。

 ため息しか出ない。

 本当に、だめなわたし。
 森下くんに対してだって、勇気がなくてなかなか自分から話しかけられなかったし、そりゃ、選ばれなくて当然だよねって気分になる。

 沈んだ気分で6時間目をやり過ごし、放課後になった。

 ホームルームが終わってみんなが教室を後にする中、わたしは意を決して絵里の席へ向かった。

「絵里……」

 話しかけようとしたところで、すっと、女子生徒が3人、わたしの前に割って入った。

 川原さんと、その友達の島田さんと江本さん。

「吉井さん。今からちょっといい? 話があるんだけど」

 トゲのある低い声。
 どくんと、心臓がいやな音をたてた。

 絵里に、何の用?