なぜか今4人で輪になって話してるけど。

 わたし以外の3人は美形、わたしだけが凡人。しかも、前髪ぱっつんの日本人形だし……。

 恥ずかしくなってうつむいていると、森下くんが、

「由奈ちゃん! どーしたの、前髪!」
 と、声をあげた。

 わ。わ。わ。ついにつっこまれた!
 
 しかも名前呼び。昨日まで「葉山さん」って呼んでたのに。それだけでも心臓おかしくなりそうだったのに。

 名前呼びの衝撃と、前髪のことで、プチパニック。

「すげー可愛いじゃん」

 え。か。可愛い……?
 顔が、火が付いたみたいに一瞬で熱くなった。

 そんなこと、男子に言われたこと、ない。男子どころか、家族にも親戚にも言われたことないかも。
 なのに、よりにもよって森下くんに……!

「可愛いよ。な? 颯太」
 森下くんは颯ちゃんの肩に腕をのっけて、意味ありげに微笑んでいる。

「吉井といい、智也といい。なんで俺に同意を求めるんだよ」
 颯ちゃんは小さくため息をついて、わたしをちらっと見て。
 そして、
「吉井も智也も悪くないっつってんだから、うつむかずにちゃんと顔上げてろよ?」
 と、言った。
 颯ちゃん。まるで、保護者みたい。

 予鈴が鳴った。絵里に小さく手を振ると、わたしはあわてて自分の席に戻った。
 ドアが開いて先生が入ってくる。

 朝のホームルームの間中、わたしの脳内には、森下くんのはなった「可愛いじゃん」がリフレインしていた。

 勘違いしちゃ、だめ。森下くんは、みんなに優しいんだから。
 でも。でも……。

 颯ちゃんと仲のいい森下くんは、すぐに、わたしや絵里とも話すようになって。
 誰にでも好かれる絵里はともかく、わたしは今まで、颯ちゃん以外の男子に、こんなにフレンドリーに話しかけられることなんてなかったから。
 どきどきして、ふわふわして、やたらと森下くんの姿を目で追ってしまう。

 これってまさか。恋、なのかな。ひとめぼれ、ってやつなのかな。

 いったんそう思ってしまったら、もうだめ。
 坂道をころころ転がり落ちて、「恋」っていう沼にとぷんとはまって、森下くんのことばかり考えるようになってしまった。

 わたし……。森下くんに釣り合うように、少しでも可愛くなりたい。
 明るくなりたい。