すっかり元気を取り戻した絵里は、翌日、明るく登校した。

「おはよっ」

 先に教室に来ていたわたしのもとへ真っ先に来てくれて、にいっと笑う。

「おはよ、絵里」

 やっぱり絵里は、笑った顔が一番いい。

 じゃれ合っているわたしたちのもとへ、さっそく、森下くんがやってきた。

「おはよ。もう、具合良くなったんだな」
 絵里に笑顔を向ける。

「おかげさまで。……ていうか、ありがとう。お世話になりました」
 絵里はぼそぼそ告げると、ぺこんと頭を下げた。

「いや、別に。大したことしてねーから」

「でも、あたしのせいでリレー走れなかったんでしょ? ほんと、ごめんね」

「だーかーらー。それはもういいから。申し訳なく思ってんなら、この前の店で、アイスおごってよ」
 にっかりと、森下くんは笑う。

「えっ」

「じゃあ、吉井のバイトしてる店のパンケーキとかでもいーよ」

「ええーっ……」
 絵里は顔をしかめる。

「吉井、今日もバイト?」
「そう、だけど」
「じゃ、おれ、今日部活帰りに寄るわ」
「ちょっと待ってよ、おごらないからねっ!?」

 森下くんはけらけら笑うと、自分の席に戻っていった。

「なに、あいつ。勝手に……」
 つぶやくと、絵里はわたしに、
「あれ、冗談だと思うから。まじで来るわけないと思うから」
 と、念押しした。

「べつにいいじゃん? バイト先に来てくれるぐらい。わたしにそんなに気を遣わないで」

 そう言ってほほ笑んだものの……、本当は、胸の奥がちくちく痛んでいた。

 森下くんが助けたのが絵里じゃなくてわたしだったら……、アイスおごってとかバイト先に行くからとか、絶対に言わないんだろうな、って。

 どうしても、考えてしまうから。

 ……と、視線を感じた。

 さっと後ろを振り返ると、川原さんたちが、こっちを見ていた。
 絵里のことを……、鋭い目で、にらみつけている。

 ぞくっと、背筋が冷たくなった。