「その、妹ちゃんがね。あたしと森下のこと、勘違いしたみたいで。何度もただのクラスメイトだよって言ったんだけど。どうしても家に来てって」

「それで、森下くんの家で、ごはんを一緒に食べたの?」

「い、一回だけだよ!」
 絵里は声を強めた。
「小1の子に、寂しいって言われたら……。つっぱねられないじゃん」
 絵里はそう言って目を伏せた。

「絵里。わたし、べつに責めてるわけじゃないから、そんな顔しないでよ」

 ほんとうに、絵里を責めたくてこんな話を聞きだしてるわけじゃない。

「わたしはただ、隠し事されるのがいやだっただけなの。絵里に、ちゃんと本当のことを話してほしいだけなの」

「……由奈」

「森下くんとは、何もないの?」

「当たり前じゃん」

「絵里は……」

 鼓動が速くなる。わたしが、一番聞きたいこと。

「絵里は。森下くんのことが好きなの?」

 わたしが告げた瞬間、絵里は虚をつかれたみたいにはっと目を見開いて、そして。

 ゆっくりと、首を横に振った。

「好きじゃない。その、そういう意味では。あいつはたんなるいい友達、それだけ」

 だから安心して、と、絵里は微笑んだ。

 胸の中がざわざわした。

 本当に? 信じていいの?

 絵里。

「じゃあ、どうして、森下くんにつっけんどんな態度をとるの?」

「それは……あいつがいらつくこと言うからだよ」

「いらつくことなんて言ってないじゃん? 昨日だって、心配してくれてただけだし。森下くん、なにか怒らせるようなこと言ったかなって、気にしてたよ」

「…………」

「いい友達だって思ってるんでしょ? だったら、ちゃんと、ありがとうとかごめんなさいとか、素直に言ったほうがいいよ。わたしのことなら、全然、気にしないでいいから」

 たしなめるように言うと、絵里は、

「……ん。わかった」

 しぶしぶ、うなずいた。