各選手、スタートを切る。
 わあっと、歓声が上がった。
 
 絵里は第2走者だ。大丈夫かな。

 絵里の様子をもっと近くで見たくて、わたしも席を立って応援テントの前に出た。

 絵里はバトンゾーンでスタンバイしている。
 うちのクラスは緑色のハチマキとバトン。
 なんと、トップだ。クラスのみんなはヒートアップしている。

 絵里に、バトンが渡った。
 絵里はトップを守ったまま、駆け抜けていく。
 すごいよ!

「絵里! がんばれ!」

 胸の前で両手を組んで祈る。
 絵里はぐんぐん走っていく。あっという間に第3走者の選手へバトンが渡る。
 だけど、

「ああーっ……」

 応援しているみんなから、悲鳴にも似た声が上がった。

「絵里……!」

 バトンを渡し終えた瞬間、絵里はよろめいて、倒れこんで膝をついてしまった。

 後ろから他のクラスの選手が来るのに、絵里は起き上がれない。

 やっぱりまだ、具合が悪いの?

 もっと強く引き止めればよかった。休むように言えばよかった。

 いてもたってもいられなくて、絵里のもとへ行こうと、クラスのテントを離れようとした……ら。

「ちょっと、何あれ!」

 川原さんたちの、トゲのある声が耳に刺さった。

「あっ……」

 森下くんが、倒れこんだ絵里に駆け寄って、立ち上がらせようとしている。

 どくんと心臓が鳴った。

 青ざめた顔をして、ぐったりしている絵里の肩を抱き、支えるようにして、森下くんはトラックの外へ絵里を運んでいく。

 川原さんたちが「やだーっ!」と悲鳴をあげているのが聞こえた。