「まあね。週二でシフト入ってて、このへんもよく来るから、森下が言ってた最近オープンしたアイス屋さん、じつは気になってたんだよね」

「じゃあちょうど良かったじゃん。俺に感謝だな」

「調子に乗るんじゃない」

 絵里がつっこむと、森下くんはあははと陽気に笑った。

 絵里と森下くんの会話は、テンポよくぽんぽんとはずんでいく。
 わたしはなかなか入っていけない。

 小さくため息をついたわたしに、颯ちゃんが小声で、

「大丈夫か?」
 と、わたしにささやいた。

「大丈夫って、なにが?」
「いや。由奈、めちゃくちゃ緊張してるから」
「うそ。わかる……?」
「うん。表情も固いし、ガッチガチ」

「絵里や颯ちゃんとしゃべるみたいに、自然に話かけられればいいんだけど……。からまわりしちゃったらどうしようとか、楽しい空気こわしちゃったらどうしようとか、不安になっちゃうんだよね」

「考えすぎ」
 颯ちゃんは苦笑した。

「もっと肩の力抜けって。空気こわすとか、ないから。仮に、ちょっとぐらい空気読めないようなこと言ったとしても、あいつ、そういうのぜんっぜん気にしないから」
「そうかな」
「そうだって」

 颯ちゃんのやわらかい笑顔。
 わたしは「そうだね」とうなずいた。

 颯ちゃんにはげましてもらったら、余計な力がすっと抜けて、気持ちがちょっと楽になった。
 そうだよね、わたしはいつも考えすぎる。昔から、怖がりなんだ。

「颯太。由奈ちゃん。ここだよ」

 森下くんがちょっと先にあるお店を指さした。

 白とブルーのマリン風の、かわいいお店。テラス席もある。

「今日、わりとすいてるね。土日とか、人すごいもん」

 絵里が言った。目が輝いている。
 絵里、アイス好きだからなあ。