どうして、君のことばかり。

 颯ちゃんの口から語られる「お父さん」は、昔の、わたしが知っている、格好良くて優しい笑顔のおじさんそのものだった。

 わたしは長いこと、おじさんの姿を見ていない。別居しているような状態になっていたんだろう。

「親父と母さんの仲がどんどん冷え切っていって、俺は昔みたいに仲良くなってほしくて、すげー気を遣ってきたんだよ。なのにふたりは、喧嘩すらしなくなって」

 颯ちゃんはラムネの瓶を揺らした。

「こっちの身にもなれよ、なんで別れないんだよ、って、ずっと思っていた。だからやっと別れると決めてくれた時、本当にせいせいしたんだよ」

 淡々と語り続ける颯ちゃんの横顔を、わたしは見つめている。

 まるで、感情の色が一切消えたような、

……ううん、ちがう。

 閉じ込めて浮き上がってこないようにしているだけ。