ルビーを模した、赤いプラスチックの、丸い石。

「いかにもおもちゃって感じだな」

 颯ちゃんは照れくさそうに頬を赤らめた。

「このつぎは、もっとちゃんとしたやつ……やるから……」

 もごもごと口ごもる。

「ちゃんとしたやつ、って……?」

 どきどきと心臓が早鐘を打ち始めた。

 颯ちゃんはわたしの目をちらっと見やると、すぐにそらして、そして。

「おもちゃじゃない指輪ってことだよ。それまで、これで我慢して」

 と、告げた。

「我慢だなんて、そんな。この指輪もかわいいし、すごくうれしいよ。ありがとう」

 人差し指できらきらと光る、赤い石。
 わたしの宝物。
 見つめていると、子どもの頃の思い出がよみがえってくる。

「颯ちゃん、昔も、わたしに指輪をくれたよね。お祭りの次の日に。お菓子のおまけの指輪」

「ああ。そうだったな」

 颯ちゃんは懐かしげに目を細めて、川面のほうを見やった。