用意のいい颯ちゃんは、小さなレジャーシートを持ってきていた。

 土手に広げて、ふたりで座る。

 ほかにもシートを広げて飲み食いしているひとたちはちらほらいたけど、花火の開始時刻が迫ってくると、みんな、より花火が見えやすい橋のほうへと移動していって、わたしたちふたりは、取り残されたようなかたちになった。

「ここだって、全然見えないわけじゃねーのにな」

「うん。ちょっと遠いけど、じゅうぶんだよ」

 屋台で買った焼きそばを食べながら、そんなことを話し合う。

 今わたしたちがいる土手は、ちょうど橋に遮られて花火が見えにくいこともあって、見物客には人気がない。

 だけど、人ごみにもまれながら夜空を見上げるよりも、断然きれいに見えるとわたしは思う。

「しかし暑いな」

 颯ちゃんはラムネをぐいっと飲んだ。
 水色の透明なガラス瓶に、からんと揺れる小さなビー玉。

「由奈は、ラムネ瓶のビー玉が欲しいって泣いたこともあったな」

「嘘でしょ? いつの話? そんなことで泣く?」

「泣いてたって」

 颯ちゃんはくくっと笑った。

「手、出して」
「? うん」

 ジーンズのポケットから、さっきくじで当てた指輪を取り出して、わたしの指にそっとはめた。

「これって……さっきの……」