桃色に染まり始めた夕暮れの空、夏草と水のにおいが風に乗って運ばれてくる。

 川沿いの小道にずらりと並んだ屋台。

 ふたりで焼きそばやたこ焼きを買って、りんごあめを買って、わたしは欲張って綿菓子まで買ってしまった。

「それにしても、すっげーひさしぶりだな。由奈と一緒に祭りに行くのも」

「そうだね。小学校以来かなあ?」

 昔は、お互いの家族と一緒に、繰り出していた。
 中学生になってからは家族と出かけるなんて恥ずかしくて、来なくなってしまったけど。

「これって、初デートってやつ?」

 颯ちゃんがぼそっとつぶやく。

「ふたりきりで行くのは初めてだから……、そうなるのかな」

 くすぐったいような気持ちだった。

 颯ちゃんが引っ越してしまってから、何度か、お互いの部活がある日に学校で会うことはあったけど、新居の片づけで忙しい颯ちゃんと、ゆっくり過ごす時間はとれなかった。

「ようやく片付けも一段落して、落ち着いてきたって感じ」

 颯ちゃんはため息交じりに、そう言った。

「おふくろは、手続きとか、色々大変そうだけどな」

「……そっか」

 屋台をぶらぶら冷やかしている間に、陽が落ちて、黄昏の短い時間も過ぎた。

 夜の色が濃くなっていくほどに、人が増えていく。