夏休みに入ってすぐ、颯ちゃんの両親は正式に離婚して、慌ただしく引っ越していった。

 別々の、家へ。

 最後に、颯ちゃんちのおばさんにお呼ばれして、ごはんをごちそうになった。
 昔はそこにおじさんも当たり前のように居たんだけど、その日は……、居なかった。

 その時、おばさんがわたしだけに、こっそり話してくれた。

「颯太が成人するまで、離婚しないつもりだったの。だけど颯太自身がね、わたしの背中を押してくれたのよ。俺のために我慢するんじゃねえ、って言って。そういうの、全然俺のためになってないから、って」 

 わたしは、息を詰めて、聞いていた。

「子どもにそんなこと言わせちゃって、情けないよね」

 おばさんは、寂しげに微笑んだ。

「由奈ちゃん。颯太とずっと仲良くしてくれて、ありがとう。隣にあなたがいてくれて、本当に、良かった」

 そう言ってわたしの手を握ったおばさんの手は、夏なのにひんやりと冷たかったけど、どこか力強かった。

「わたしこそ。颯ちゃんと一緒に過ごせて、幸せでした。……これからも、ずっと」

「そっか、彼女だもんね」

 わたしも颯ちゃんも何も言ってないのに、なぜか色々ばれていた。

 毎日一緒に登校して、一緒に帰ってきてたから、気づかれて当然と言えば当然なんだけど、やっぱり恥ずかしい。

「ずっと、の続きは、颯太本人に言ってあげてね」

 おばさんは、いたずらっぽく笑った。