なのにお互い、相手のことを想って……、気持ちを告げないつもりでいたなんて。

 わたしたち、笑っちゃうぐらい、似た者同士なのかもしれない。

「見て見て、ママ! ラブラブ!」

 いきなり、はしゃいだ子どもの声が飛んできた。
 はっとしてふり返ると、幼稚園の制服を着た男の子が、わたしたちを指さして目をキラキラ輝かせている。

「こらっ。よしなさい」

 男の子のママは小声でたしなめると、わたしたちのほうに、申し訳なさそうに頭を下げた。

 よく考えたら、ここ、住宅街の真ん中の、道端だった。

 こちらこそすみません……!

 めちゃくちゃ恥ずかしくなって、ぱっと、お互いの手を離した。

「か、帰るか」
「う、うん」

 ぎこちない会話をかわす。

 颯ちゃんの顔は相変わらず真っ赤だし、きっとわたしも赤くなってるんだと思う。ずっと顔もからだも熱い。

「由奈。俺のことを心配してくれて、ありがとう」

「……ん」
 ふわふわと雲の上を歩いているみたいで、足もとがおぼつかない。

「俺は、由奈が好きだからこそ、言えなかった、家のこと。由奈に余計な心配かけたくなくて」

「余計、なんかじゃないから」

 そこは、わかってほしかった。

「わたしには何の解決能力もないけど、話を聞くことしかできないけど。分かち合いたいって思ってる。……楽しいことも、つらいことも」

「うん」

「でも、そっとしておいてほしい時は、そんなふうに言ってね。わたし、つい踏み込みすぎちゃうから」

「わかった」

 颯ちゃんの笑顔は、穏やかで、やわらかかった。