うつむいたまま、わたしは、顔を上げることができない。

「大好き」

 自分の声が、かすかに、震えている。

「だから、ほうっておけなかった。ごめんね」

 夕方6時のチャイムが鳴っている。

 颯ちゃんはかすれた声で、

「……嘘、だろ?」

 と言った。

「嘘なんか、つくわけないじゃん」

 むきになって顔をあげたら、颯ちゃんは、耳たぶまで赤くなっていた。

「由奈はまだ、智也のことを想ってるって」

 ぶんぶんと、首を横に振る。

「わたし、気づいたの。わたしが本当に好きだったのは、颯ちゃんなんだって。ずっとずっと、颯ちゃんのことばかり考えてる」

 雲の切れ間から広がった空は、淡い桃色に染まっている。

「ずっと、颯ちゃんのことばかり……」

 想っている。想い続けている。

「告げるつもり、なかったのに。わたし……」