「誰にも言いたくないことだって、あるだろ。由奈にだって、あるだろ。俺には言えないことのひとつやふたつ」

 颯ちゃんの口調は優しかったけど、……また、シャッターを降ろしたんだ、って思った。

 わたし、ばかだ。
 口出しせずにそっとしておこう、と思っていたのに、できなかった。

 もっと颯ちゃんに近づきたいのに、だけど颯ちゃんはさらっとかわして、何でもない顔して笑う。

 もどかしくてたまらない。

「そうだね。颯ちゃんの言う通り。わたしにも、颯ちゃんに言えないこと、あるもん」

 どきどきと、心臓が波打っている。

「わたしだって、本当の気持ち、隠してる」

「本当の……気持ち?」

 こくりと、うなずいた。

 わたし。わたし……、もう、止められない。

 堰を切ったように、気持ちがあふれ出してくる。

「わたし……」

 胸が苦しい。
 伝えちゃだめ、だけど、


「颯ちゃんのことが好き」


 言って、しまった。