「平気なふりして、吉井と智也が一緒に居るところに来て、明るく振舞わなくてもいいってことだよ」

 待って。
 もしかして颯ちゃん……。

「わたしが、まだ森下くんのこと引きずってるって思ってる?」

「引きずってるだろ? 智也と話して赤くなったりしてるし。そのくせ、吉井たちのこと『ラブラブだよね』とか言って、俺に心配かけないようにしてる」

「赤くなってる? そんなことは」

 ない、はず。
 あ、でも、颯ちゃんとのことをけしかけられて、恥ずかしくなったことはある。
 あるけど。

「由奈は。俺には、強がらないでとか、何でも話してとか言ってるけど。自分のほうこそ、俺に」

「違うの!」

 わたしは颯ちゃんのせりふをさえぎった。

「違う。わたしはもう、森下くんのことは、なんとも思ってない。いいお友達、それだけ」

 誤解されたままじゃ、嫌だ。

「わたしが。わたしが今、強くなりたいって思ってるのは……」

 颯ちゃんの目を、まっすぐに見つめた。


「颯ちゃんの、ためだよ」