颯ちゃんもいると聞いたから、わたしはわざわざジーンズとTシャツからワンピースにに着替えてしまった。
 ワンピースといっても、ドット柄のゆるいAラインの、カジュアルなものだから、張り切りすぎちゃった感もないと思う。

 颯ちゃんの前でおしゃれしようと思ったことなんてなかったのに。
 ガーデニング作業着だって平気だった。

 雨はまだ降り続いている。

 絵里のマンションに着き、インターフォンを押すと、なぜか森下くんが出迎えてくれた。

「いらっしゃーい」

 面食らって、のけぞってしまう。

「今ね、絵里んち誰もいないんだよ。俺たちだけ」

「なるほど、それで」

 もう家族の一員として受け入れられてるのかと思ってしまった。
 森下くんのキャラだったらありえるけど。

 リビングのローテーブルにお菓子の袋を広げて、絵里と颯ちゃんがテキストとにらめっこしている。

「びっくり。まじめに勉強してる」

「失礼な。勉強するために集まってるんだから、当然でしょ?」

 絵里が口をとがらせる。
 立ち上がって、わたしのために戸棚からグラスを出してジュースを注いでくれた。

「どうぞ。空いてるとこ、適当に座って」
「うん」