雨がしとしとと降っている。

 わたしと颯ちゃんが一緒に帰るようになって、一週間が過ぎた。

 今、期末テスト前だから、部活は休み。毎日まっすぐ帰っておとなしく勉強している。

 今日は土曜日だから一日家の中にこもって机に向かっている。
 だけど、テキストの内容は頭の中を素通りしていくばかりで、ちっとも集中できない。

 特大のため息をこぼしたところで、電話が鳴った。

 絵里から。

「もしもし由奈? 今、うちで智也と勉強してるんだけど、由奈も来ない?」

「えっ? でも、わたしが行ったら邪魔じゃない?」

「何言ってんの」

 絵里は明るく笑った。

「三崎もいるから。由奈もおいで」

 そういうことか。

「絵里……。森下くんとぐるになって、なにか企んでない?」

「企んでなんかないよー。由奈ってば、考えすぎ」

 これは絶対企んでるなと思ったけど、絵里の家には行くことにした。

 颯ちゃんもいると聞いたら、やっぱり胸が弾んでしまう。
 毎日会っているのに、今日も会いたい。
 声が聴きたい。
 気づいたら、颯ちゃんのことを思い浮かべている。

 末期症状。

 隣に住んでいてこれなのに、颯ちゃんが引っ越してしまったら、わたしはどうなってしまうんだろう。


 一緒に帰る約束は、一学期が終わって、夏が来るまで。

 じゃあ、夏が来て、颯ちゃんがお隣からいなくなったら? 

 その先の約束は、交わしていない。