どうして、君のことばかり。

「毎日一緒に帰りたいなんて、わたしが言い出したから。迷惑、だよね」

「迷惑じゃねーよ」

 すぐさま、颯ちゃんは否定した。

「迷惑じゃない。むしろ、俺は」

 じっとわたしの目を見つめる。

 とくとくと、胸が高鳴りはじめる。

 颯ちゃんの瞳が、熱を帯びている。

 前にも、颯ちゃんのこういう瞳、見たことがある。
 どこか切なげで、どこか熱っぽくて。
 見つめられて、わたしはどうしようもなくどきどきして……。

 あの時。

 森下くんに失恋して、颯ちゃんの胸で、泣きじゃくってしまった時。

 記憶が蘇って、わたしの体温が、いっきに跳ね上がった。

「俺は」
「颯ちゃん。わたし」

 銀杏並木の下、歩道の端っこで、わたしは一体、何を告げようとしているんだろう。

 口にしないと決めていたのに。

 だけど。颯ちゃんのまなざしにとらえられたわたしの思いは、もう、決壊寸前で。

「わたし、颯ちゃんのことが」