さわやかに笑うと、森下くんは走っていった。
 さすが陸上部、速い。
 あっという間にその姿が小さく遠ざかっていく。

「由奈」

 呼ばれて、ふり返る。

「颯ちゃん」

 胸がいっぱいになる。
 「大好き」で、いっぱいになる。

「さっき、智也と何か話してた?」

「う、うん。ちょっとね」

 告白をけしかけられたなんて、言えるわけない。
 思い出すだけで顔が熱くなる。

「やっぱり由奈、まだ……」

「え?」

「いや。それより、待たせて悪かったな」

「ううん。わたしのほうこそ、へんなこと言い出して、ごめんね」

 毎日一緒に帰りたい、だなんて。
 あの時颯ちゃんは、何も言わず、ただ、うなずいてくれた。
 すごく驚いたような顔をしていたけど。

 だって、同じ通学路を一緒に帰ることも、もうなくなるなんて言われたら。