「由奈もだし、香奈も、おじさんやおばさんも。今まで仲良くしてもらったから、最後にお礼がしたい、って」

「最後……」

 すうっと、足元が冷えた。

「聞いてもいい? その、颯ちゃんは、おじさんとおばさん、どっちに」

「ん。……母さんの方」

「そっか」

「うん。親父には、その……、いるから」

 誰が、とは、わたしはあえて聞かなかった。

 そんな悲しい言葉、颯ちゃん自身に言わせるわけにいかない。

「あの、颯ちゃん」

「何?」

「昨日は、ごめんね。わたしのほうから呼び出して、無理やり話を聞きだしたのに。勝手に拗ねて帰っちゃって」

「気にしてねーよ」

 颯ちゃんは苦笑した。

「由奈には自分から話さなきゃいけないって思ってたから」

「……ん」

 ゆっくりと、銀杏並木の坂道を下っていく。
 交差点で信号が青に変わるのを待つ。
 夕暮れの街並みの中、行きかう車のライトが淡く光る。