そのまま、わたしの手の届かないところまで走り去っていきそうで、怖かった。

 ばかなわたし。

 本当に、離れてしまう日が来るなんて、想像すらしていなかった。

「颯ちゃんが走るとこ。もう、見られなくなるかもしれない」

「……どうして?」

 絵里が小さく首をかしげた。

「詳しくは、まだ話せないけど。颯ちゃんが、遠くに行ってしまうかもしれないんだ」

「え?」

 絵里の表情が陰る。

「どういうこと?」

「……当たり前だったことが、当たり前じゃなくなるってこと。幼なじみとしてそばにいることが、できなくなるかもしれない」

「事情は……よくわからないけど。だったら、なおさら、由奈は三崎に告げるべきなんじゃないの?」

 絵里はわたしの手を、きゅっと握りしめた。

 わたしはゆっくりと、首を横に振った。