さて、瑠璃はどうなったかな。
そう思って前を見る。

隣は…上田君であってた。
よかったあああああああああ!
違ったら正直心臓ばっくばくだよ。

柄にもなく焦った。
でも楽しそうに会話してる二人を見てたら微笑ましかった。

みんな瑠璃と上田君が付き合ってること知ってるしね。
裏では言ってる子ももちろんいるだろう。
それでも手を出さないあたりこの学校はかなりいいと思う。

上田君への告白は絶えないけど純粋な気持ちだからって瑠璃はなにも言わない。

きっと辛いだろうけどそこらへんはちゃんと上田君が安心させている。

うん、実に良くできた人だ。
やっぱお似合いだね。
そう思うとすごく心が暖かかった。

そう考えてたら瑠璃が口パクで

「ありがとう」

って満面の笑みで言うものだから
私は微笑みかえした。

────「宮川。」



「吉良君。」

びっくりした。いきなり声がするんだもの。
隣が彼なのか…。
そう思い周りを見渡すとこちらを羨ましいそうに見ている女の子がかなり…。

いや、うん。私も変わりたいよ?
吉良君に興味はない。

─いや 持ちたくないんだ。

純粋に水泳を愛して楽しんでる彼を見ると
苦しくなるから。
夏を感じる彼を見ると、
"やりたい"って思いが溢れてしまうから。

でも
「宮川、よろしくな」

なんて、太陽のような優しい笑顔で笑うから

「うん、よろしくね」

この自分勝手な狭い気持ちを閉じ込めて笑うんだ。

─逃げてるだけなのにね─

そんな声を無視して。