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「おはよう、いづ!」

「おはよ、瑠璃。」

「今日は一時間目から体育だね~」

「そうだね。でも私見学だから!」
胸に少しのつっかかりを覚えつつも笑顔で返す

「いいなー!」

この子はしってる。だから、だからこそ見学を"ずるい"ではなく"いいな"と言ってくれる。優しい子なのだ。

「でしょ?」

「しかぁし!なんとっ!後半はバスケをさぼっ…ごほんっ」

言い直さなくてもさぼるっていいかけたよね。

「バスケを終わって男子の水泳を見るのです!」

そ、っか。
あぁ、だめだなぁ。やっぱりやりたいなんて。
"水泳"の一言で反応してしまう自分が嫌になる。

そんな気持ちを隠しつつも
「瑠璃は上田君を見たいだけでしょ」
と少しからかった。

「ちょ、いづっ!」
顔を真っ赤にして照れる瑠璃。
ほんっと可愛いなぁ。癒される。

「ふふ。あってるんでしょ?」

「そりゃ…みたいよ。好きだもん」
小さな声がかえってくる。

「ほら、時間ないから急ぐよ。」

話してたらもうすぐベルがなってしまう。
小走りで体育館に向かう。

あまり走れない私を瑠璃は気遣ってくれた。
ほんと、申し訳ないよ。

ギリギリ体育館についた私たちは先生に
「ギリギリだぞー!宮川、安藤。
水泳見たいならはやく来い。」
といわれた。

あぁ、だから皆あんなに着替えを急いでたのか。

「「すいませーん」」

軽く瑠璃と謝る。
すると聞こえてくるのは

「ほんと迷惑。」
「走れないならもっと早く来るようにすればいいのに。」

それに気づいた瑠璃が
「大丈夫?…ちょっと!」

「いいよ、瑠璃。大丈夫。ありがとう」

「…わかった。」

瑠璃、ありがとう。ごめんね。
別に言われて何かを思うことはない。
そう、迷惑かけてるのは私であって
言われたことは事実だ。

「んなこといってねーで、とっとと始めんぞー」
それを見かねた先生が授業を始めた。

いつも通り私は壁に背を預けて見学する。
時計の針が少しずつ、進むのを見ながら。

ピピィーーー

その音を聞いて思い出すのは水。
全てを、包み込んでくれる水。
おいでって手招きされるように飛び込む、感覚。

ほんとに、だめだなぁ。
なんて思いつつ、そのホイッスルはバスケの試合終了の音だったことに気づく。