頼みがあると言われて日向君達について図書室の一番奥のテーブルに座った。

本当にこんな有名人が私なんかに何の用だろう。
やっぱり私、何かやらかしたのかなぁ。何か気に触ることでもしちゃったのかもしれない。あー、これ以上学校での居場所がなくなると困るなぁ。
私のこと探してたっていうし。ああ、やっぱり悪いことしちゃったのかなぁ。
緊張しまくっていたためにずっと下を向いてしまっていた。
すると、有田くんが『違ってたらごめん。』と前置きして日向くんが話し始めた。

「城本さんは『ボイスミュージック』っていう音楽アプリわかる?」

「し、知ってますけど……。」

びっくりした。私は知ってるけど、日向くん達が、音楽アプリになって知ってるんだ。っていうと失礼になっちゃうけど、本当に日向くん達は音楽とかには無縁そうな感じがする。
『ボイスミュージック』っていうのは、5年前ぐらいからリリースされてて、今でも結構人気のある音楽アプリ。自分の好きな曲を歌って、それを配信する。聞く専門の人もいるけど、配信者の歌い手の中には、上手い人は本当に上手いし、そこから音楽活動をスタートした人もいるってぐらい。アカウント登録者数も結構多くて、世界的に有名なのかもしれない。
そして私が何で知ってるかっていうと、みんなにも親にも内緒で、『月姫』っていうアカウントで、私もアプリを入れている。それも私の性格からしたら全く無縁に見えるけど、私は配信者側。つまり、歌い手。

私の性格からして、このアカウントがバレることはまずないし、全く心配していない。