『…おかけになった電話は現在使われておりません』 真子は空を見上げて大きく息を吸う。 冷たい、冬の空気だった。 乾燥した空気が身体に染み込んでゆく。 真子は冬を好んだ。 しかし、同時に彼女を苦しめるのも冬であった。 『ツーツーツー……』 早く、歩かなくてはならない。 会社に遅れてしまう。 歩く速度は上がる。 私は、今日も生きている。 春ちゃん、あなたはどこにいますか?