俺様社長は溺愛本能を隠さない


言い合う二人を、私はなんてアホらしいことに巻き込まれていたのだろうと遠い目で眺めた。

なんだろうこの状況……。

これだけでも十分厄介なのだが、ここへあとひとり、一階のオフィスに残っていた若林君が上がってきた。

「あのー、すごい声が聞こえましたけど、大丈夫ですか?」

このマッシュも面倒なんだよなぁ……。

彼は平静を装っているが、桃木さんを見て目がハートになっている。
今思えば、桃木さんが若林君を誘惑したのは、彼を私から引き離すためだったのだろう。
それだけのために、なんて罪深いことを……。

「ああ、もう帰る。おい若林、お前んち、ここから徒歩だよな?」

「はい」

「終電ないから、桃木を泊めてやれ」

「ええ!?」

うわぁ……。

猫のような笑顔に戻した桃木さんは若林君の手をそっと握り、「よろしくお願いしまぁす」と言った。
……面倒だから、若林君には教えてあげなくていいや。

「有村は俺が送っていく」

……そりゃ、そうなるよね。
それが自然だ。

「はい。よろしくお願いします」

送ってもらうだけなのだから、こんなに緊張することないって。
オフィスを出て、入り口で二手に別れると、都筑さんは手を繋いで先を歩いた。

何も緊張することない。
送ってもらうだけだ。

でも、やっと本当に二人きりになれた気がした。