街を見下ろしながら寂しい気持ちになっていると、若林君も二階に上がってきた。

「有村さん。もう帰るんですか。……今日はご迷惑おかけして本当にすみませんでした。交渉してくれて、助かりました」

疲れですっかり弱々しくなってしまった若林君が、少し可哀想に思えた。

彼の肩を叩いて、笑顔を作る。

「大丈夫ですよ。都筑さんもこういうこと、よくありましたから」

「え……本当ですか?」

正確には、都筑さんは仕事の納期で揉めたり他人の手を借りることはないが、デザインについて先方と喧嘩になることは多かった。
収めることは私に任せ、自分は気持ち良くデザインするだけ。

笑っちゃうくらい、彼は最初から自分勝手な人なのだ。

桃木さんのことも、あれだけ実力があるなら昔の関係は気にしないのかもしれない。
それこそ私に義理立ててまで優秀な人材を遠ざけるという選択肢はないのだろう。
分かっていたはずなんだけどな。

ただ寂しくて。