「……よし。おい、皆生きてるか。だいたい目処がついた。あとは若林と俺達で仕上げるから、帰っていいぞ」

都筑さんの号令で、佐野さん、堤さん、そして眠っていた金沢さんは体を起こし、次々に背伸びをした。
三人ともげっそりとしているが、達成感で表情は明るい。

「じゃあお言葉に甘えて、お先に失礼します」

「ああ。気を付けろよ。ありがとな」

すぐに帰る準備をした三人は、揃ってオフィスを出て行った。
終電は過ぎているから、電車組の二人は金沢さんの車で送ってもらうのだろう。
若林君も、彼らを見送りに外まで付き添いに行く。

私はどちらだろう。
すぐに帰る組なのか、残る組なのか。
“俺達” じゃ分からない。
桃木さんと二人で言い合いを続けているから、彼女は当然に残る組なのだろう。

私は残っていても、もうできることはない。

ひとりで二階に上がり、戸締まりをすることにした。
これが終わって、皆のマグカップを洗ったらもう帰ろう。

会議室の窓の鍵にひとつずつ触れて、閉まっていることを確認していく。
カーテンの隙間から、人通りの少なくなった真っ暗な路地が見えていた。

今日は色々ありすぎたけど、とりあえず、若林君の案件が無事に終わりそうで良かった。