若林君は携帯を落としそうになりながらも、すぐに取り出し、耳に当てた。
彼がポケットから出したときに一瞬見えた画面には、『豊崎さん』と表示されていた。
豊崎さんとは、若林君がパッケージデザインを引き受けている『モードレコード』の担当者のことだ。
お得意様だけど、注文が多くて若林君も手を焼いているはず。
何かあったのかな。
「……はい、そうです。ええ。……えっ?」
声が裏返った後、青くなる若林君。
さっきまでここにあった緊張感とは別の緊張感が彼以外の私達にも走る。
都筑さんは目を細め、腕を組んだ。
「あ、あ、はい……ええ、すぐに……そうですね、明日、ですよね……」
何……?
どうしたの……?
「もちろん……ええ……はい、それでは……」
若林君、携帯を持つ手が震えている。
これは何かまずいことがあったときの合図だろう。
電話が終わると、都筑さんはすぐに「どうした」と低い声で尋ねた。
さっきまで啖呵をきっていたはずの若林君も、よほど重大なことが起きたのか都筑さんにすがるような視線を向け、話し出した。
「……モードレコードの、パッケージで……仕様変更の色が依頼と違っていたみたいで……。明日の打ち合わせのとき、直して持ってきてほしいと言われました……」
「あのパッケージデザインか。どこの色が違うって?」
「……背景色です」
「なんだと!?」
嘘でしょ!?
今さら背景色の変更?



