エントランスへ向かう戸川さんの背中を確認し、とりあえず一安心。
私はそれとは反対方向の裏の通用口から出るしかない。
このまま都筑さんを振り切って行ってしまおうかとも思ったが、相変わらず「おい」と彼がしつこいのと、彼がここにいる理由も少し気になったため会話に応じることに。
ラウンジの近くで足を止め、往来で立ったまま彼に向き直った。
「……で、なんで都筑さんはここにいるんですか」
「俺は今からここで用事があるんだよ」
「仕事ですか?」
「仕事だ」
「……私、スケジュール何も聞いてませんよ。私に予定を言わなかったことなんてないのに……」
「悪かったって。別に大した仕事じゃない。……それより、お前こそなんでだよ。婚活は行かないって言ったよな」
やはり婚活だとバレている。
でも、昨日のあの中途半端な言い付けではこちらが守る義理はない。
行かないって了承してないのに勝手にキスして帰ったくせに。
「別に都筑さんには関係ないですよね」
「なんでだよ! 俺たち付き合うことになっただろ」
初耳なんですけど!
「つ、つ、付き合……?」
「嫌がらずにキスしたんだからそういうことだろ? 有村は好きじゃない男とキスするのか?」
「……それはっ……都筑さんが無理矢理……」



