「都筑さん!? なんでこんなところにいるんですか!?」
「それはこっちの台詞だ。お前まさか……」
視線で私のワンピースを上から下までなぞる彼が何を言いたいのかはすぐに分かったが、今はそれどころではない。
大きな声で騒いでいたら戸川さんに気づかれる。
というか、もうこっちへ来ちゃうって!
「とりあえず都筑さん隠れて下さいっ!」
「は!? おいっ」
私は都筑さんの腕をとると、無我夢中で多目的トイレの中へと引っ張り込んでいた。
素早くスライド式の扉を閉め、施錠のボタンを押す。
都筑さんの腕を握り絞めたまま、戸川さんらしき足音が通りすぎて行くのを息を潜めて待った。
「……おい。有村。いきなりなんなんだ」
小声でそう聞かれて返事をしようと彼を見ると、都筑さんたら顔を赤くして戸惑っている様子。
慌てて彼の腕を解放し、距離をとった。
冷静になり、トイレに洗面台、オムツ換えシートもあるこの広々とした空間を私達が占領しては迷惑だと気付いた。
ここで話し込むわけにはいかない。
私は再度、都筑さんを引っ張って、人目につかないように多目的トイレから出た。



