──アフタヌーンティーは二時間に及んだ。
(やっと終わった……!)
二人でエントランスへ出て、お互い最後に「また連絡します」と会釈をし、反対方向へと別れて解散した。
私はぐるりとホテルの裏口に回り、化粧室に直行した。
女子トイレにはメイク直し用のライトアップされた鏡が並んでおり、そこに写った私は長時間酷使した口角がヒクヒクと悲鳴を上げている。
疲れた……。
後半はほとんど戸川さんの海外旅行記の話を聞かされた。
特にヨーロッパ一周旅行、おそらく私に現地にいるかのようなアハ体験をしてほしかったのだろうが、長すぎて肩やら背筋が痛いのなんの。
軽く化粧を直し、トイレを済ませた後、今度こそ本当に帰ろうと女子トイレを出た。
──「うん。そうなんだよ。有村さんっていうんだ」
ん!?
私の名前が聞こえた。男子トイレからだ。
私は素早くまた女子トイレに引っ込んだが、それではよく聞き取れないため一歩ずつ女子トイレから出て、男子トイレの入り口すれすれまで近づいていった。
「そう。感じの良い人だったよ」
この声、戸川さんだよね……?
戸川さんもわざわざホテルに戻って来たということなの?
誰かと電話している。



