……いや私、まだ貴方のお母様の顔も知らないんだけど……。
関わりのない他人との同居を可能かと言われても、そんなこと分かるわけない。

失敗した! 今のはきちんと断っておくべきだったのかな。

「有村さんのような女性と出会えるなんて、僕は幸運でした。なかなか貴女みたいにしっかりしていて寛容で、おまけに美人な方はいませんよ。少なくとも今まで紹介された女性達とはレベルが違いますね」

「いえ、そんな……」

「本当ですよ。有村さんこそ、婚活なんてしなくても男が放っとかないんじゃないですか? ……まあそういう男より、僕の方が条件は良い自信はありますけど」

紅茶が気管に入ってむせこんだ。

条件といえば身近に『二十八歳、有名デザイナー兼社長、年収五倍、イケメン、長身』がいて一応言い寄られている、とはとても言えない。

「そうですね……私も戸川さんみたいな方とは、なかなかお会いしたことありません……」

戸川さんが霞んで見えるのは、都筑さんのせいなのだろうか。

目の前の彼は目をギラギラさせて口説きモードに入っているのに、全く心が動かない。
都筑さんに見つめられたときのような胸のドキドキが感じられない。

ダメだなぁ、都筑さんてば、ことごとく私に悪影響を及ぼしている……。