「今日晴れて良かったですね。電車でいらしたんですか?」
やたらと広いラウンジのソファ席につくと、さっそく戸川さんから会話を始めてくれた。
「はい。車は持っていないので」
「じゃあ、職場も電車で? 秘書をやってらっしゃるとプロフィールで拝見したんですが」
「ええ。まだ三年です。デザイナーを数年やって、その後秘書になりました。デザイナーとしては芽が出なくて」
「へえ、でもすごいな。僕には昔から芸術の才能がなかったので、羨ましいです」
うわ、この人、話すのも上手い……。
フルーツティーとコーヒーが運ばれ、三段トレイにはサンドイッチ、スコーン、ケーキが乗っている。
ナイフとフォークで手をつけながら、私も質問を探した。
「戸川さんは営業職なんですね。こんなに有名な会社にお勤めで、私にはとても想像がつきません……。どんなことをされているんですか?」
「素材を扱うメーカーなので、どう使ってもらうか想像してどこへでも売り込みに行きますね。日本全国、時には海外。ほとんど出張になります」
「まあ……。では、英語も使うんですか?」
「はい。英語、中国語、フランス語は特に使います。ビジネスだと意外と通じるものですよ」
「え、すごい……」



