俺様社長は溺愛本能を隠さない


これで何回目かの“キスするんじゃないか”という距離まで迫られている。

キスしたら絶対ダメだ。
どこまでも付きまとわれているせいでまだろくにひとりで考えてもいないのに。

キスしたら、おそらく、ここで都筑さんのものになってしまう。

「だ……め……」

目を閉じて懇願したのだが、都筑さんはこのとき私から目をそらし、私の背後にあるクローゼットを見ていた。
私もつられて背後を振り返る。

クローゼットの取っ手に、ハンガーに掛かったワンピースが下げられている。
クリーム色の生地、膝丈に入ったプリーツ、体のラインを見せるためにウエストで絞られたリボン。

仕事中の私からは想像もつかないような特別なワンピースだ。

「都筑さん……」

背筋が凍るほど冷たい目で、ワンピースを睨んでいる。

「……婚活の男といつ会うんだ。これ着て会うんだろ」

気付かれた……!
そして声が低い……!

「……明日です」

明日の年収一千万円さんとの顔合わせのためにワンピースを用意していたのが仇となった。
追求される予感がビンビンしている。