なにこれ……どういうこと……?
これ本当に都筑さん? もしかして別人? ドッペルゲンガー?

真っ正面から凝視してくる彼を一旦放置し、私はショート寸前の頭を一度真っ白にする。
しかし再度ブラインドの音を立てられたため、硬直して彼に目を戻すしかなかった。

「有村……」

待って待って……。

「……俺、無性に有村に会いたくなったり、話したくなったりするんだよ。他の奴のサポートばっかりされると連れ出したくなるし、忙しくされると時間を割いてほしくなる。今でさえこんな状態なのに、男と会ってその上結婚されたとしたらとてもじゃないが正気でいられる気がしない。これって……」

顔が近づいてくる。

「ちょっと待って都筑さんっ、近い、近いっ! 近いですって……!」

「俺、多分……有村のこと好きだ」

キスされそうな距離まで迫られたことで、私はロックオンされたという自覚が背中からサーッと込み上げ、体温が上がっていく。

美しい形の唇がもう目の前。

ダメだってば──!

「私は違いますから!」

彼の体を両手で押し戻した私は、その胸に向かってそう言った。
一瞬ふらついた都筑さんのリーチから小走りで抜け出すと、デスクに寄ってハンドバッグをかっさらい、全速力でその場から逃げ出した。

私はそのまま帰宅し、オフィスには戻らなかった。