「神菜、おまえそんなんだからダメなんじゃね?」

わざと意地悪く言ってみた。

「何が?」

「お前、恋愛にあこがれてるだけだよ。それじゃいつまでたっても進歩ねーよ?」

「うっ…」

と、神菜の言葉がつまった。どうやら図星だったらしい。

「でも、わかんないよ、いきなり素敵な人が現れて、突然神菜のことさらっていくかもしれないし!」

「素敵な人…ね…」

それが俺ならいいな。

なんてちょっと自己本位なことを考えてみた。

こうやってみると、神菜は天然で会話していて楽しい。まぁ楽しくなければ俺も今ここにいないんだけど。次に何が出てくるか、人より少し斜め下あたりの言葉が返ってくるのが結構俺的には面白かった。
かといって、常識がないわけではない。いきなり人んちに押し掛けるという、ちょっと非常識なところもあるが、両親への対応など見ているとまともだった。それに、友達の彼女に対する扱いが酷いという理由で怒れるあたりも、人として優しいと思われる。

ころころ変わる表情が俺は楽しくて仕方なかった。

怒らせても、喜ばせても、驚かせても、一目でわかる。

それに、なにより俺のことを気持ち悪がらない。
最初は戸惑っていたみたいだけれど、今は普通に話す友達にまでなった。神菜は人を境目でとらえないのかもしれない。それはすごく俺にとって居心地が良かった。