「まぁ…誰も来なさそうないい喫茶店なら知らないこともないけど」

と、大槻が言った。

「じゃぁそこ行こうよ!」

あっさり決まった。
確かにスタバじゃクラスと言わず学年の人とも遭遇率高いもんね。

繁華街の見落としそうなビルの二階にその喫茶店はあった。

「プリンス…すごいね…」

その喫茶店は、「プリンス」と言う名前で、世界各国のお土産をとにかく雑多において、その周りは観葉植物で埋もれてるようなお店だった。

「見た目はかなりアレだけどコーヒーは美味しいぞ。」

と言って、大槻はコーヒーを頼んだ。

「あたしカフェオレ」

ほどなくして店員さんがコーヒーとカフェオレを運んできてくれて、大槻がじろっとこっちを見て一言

「で、呼び出しといてなんなんだよ」

と不機嫌そうに言った。

「あ!怒ってる!怒りたいのはこっちよ!あたしの一週間を返して!」

「はぁ?何言ってんだお前?」

「だってそうでしょ、松下さんのこと、あたし知らなかったんだから。」

「知ってたところで何もねーじゃん」

「学校で大槻のこと優喜く~んなんて呼んでたらそりゃ勘違いもするわ!」

ちょっとけんか腰の私。


だって、忘れられないからね。

あの帰り道のこと。

でもそれは口に出さない。

と言うか出せない。
あの日のことはどちらかと言うと、二人の間ではあったようななかったような、そんな感じの出来事になっていた。
大槻からも言い出さないし、ましてやあたしからは絶対言い出さない。だからキスをしたことは事実だけど、それ以上は二人とも口に出さない。

真意を聞きたいのはやまやまなんだけど、真意を聞いたところでどうしようもないって言うのもあるしね。