「誰か、あいつにブレーキ掛けないと、本気でされるがままになるんじゃないかと思ったんだ。まぁこういう場合、たいてい理由は彼氏なんだよな。だからまぁ普通に彼氏の好みなんだろうって想像ついた。」

そこまで一気に話した大槻を、あたしは感心してしまった。もっと無口なやつかと思ってた。

「ねぇ、大槻、なんであたしが変わったのわかったの?」

「グミ」

「え?」

「カッチェスのグミ。俺の大好物。」

大槻は恥ずかしそうに答えた。
ある日もっていたカッチェスのサワーアップル味のグミ。実は大槻が毎日食べているものだったらしい。

「きゃはは、くだらなーーーーい!!!!!」

あまりの単純さに思わずあたしは笑い転げてしまった。

「う、うるせーよ!!!


でも、そのせいで、そいつのこと、だんだん気になり始めたんだ。」

「無理してるの、バレバレだったのに?」
ついつい自嘲気味に尋ねた。

「その、無理が、なんか似てる気がしてさ。」

「え?誰と?」

「…俺と。」

しばらくの沈黙。


ぷっと吹き出すあたし。


「ちょ、やだー、大槻みたいな何考えてるかわかんない人と一緒にしないでよ!」

「お前なぁ…俺は普通だ。」

普通と言い張る大槻がおもしろくって余計笑ってしまった。もうこうなってくると、何が普通で何が特別なのかわからなくなってきた。もうそんな区別、どうだっていいよね。

「でも、大槻、意外としゃべってくれるよね。」

「クラスのやつと話したのは久しぶりかな。」