大槻は歩くペースを変えないので、あたしがちょっと小走りにならければならなかった。
それが、その質問をしたとたん、もっとペースが上がってしまった。

「ちょ、ちょっと待ってよ大槻!」

「お前さ、まだあいつのこと好きなの?」

突然大槻が話題を変えてきた。あいつって、当然タク先輩のことだよね。

「…わかんない…。でも、確かにあたしの彼氏だったし、はじめての彼氏だったからすごい嬉しくて、あたしのつまんない普通の高校生活を変えてくれたんだ…。」

「グミ食いだしたの、あいつのせいだろ。」

「…それ、聞こうと思ってたんだけど、何で分かったの?」

「俺、意外と教室見てるんだぜ。ある日これと言って特徴のない女が、突然洋物のグミ食いだした。しかもうちで取り扱ってるやつ。そしたらさ、そいつどんどん変わってくんだよ。」

「それってあたしのことだよね?」

「その変り方がすげー面白かった。確かに可愛くなっていくんだよ。それがわかりやすいと同時に、なんか操り人形みたいだった。バカなやつ…と思ってたんだけどな、最初は。それに毎日グミ食いだしたしさ。何でグミなんだよとか内心突っ込んでたんだ。」

操り人形って…あたしのこと…か。

「でも、見てるうちにだんだん可哀想になってきたんだ。友達面してる奴らは誰も気づかねーし、誰かあいつを止めてやったほうがいいんじゃねーか?と思うようになってきた。そんでもってまだグミ食ってるしさ。誰か止めろっつのな。」

「…なんかバカみたいだね、あたし…」

冷静に聞かされると、ほんとバカみたいだ・・・。やっとできた彼氏だからって無理しちゃってるの、バレバレだったんだね・・・。

「それが日を追うごとに気になって仕方なくなってきた。俺、教室のやつらになんか興味ねーのに、おかしくなったのかと思いもした。」