オジサンは大槻の部屋に通してくれた。

「じゃあここでちょっと待っててね。」

おまけにあたしの大好きなグミ3袋(!)とこれまた洋物のクッキーを紅茶と一緒に出してくれた。やさしいおじさまだなあ…。それにロマンスグレーの素敵な髪の毛。よく見ると大槻とちょっと似てる。あ、当り前か…。

大槻の部屋は、男の部屋らしからぬ、モノトーンで統一された整然とされた部屋だった。
ひとつ違うのは、本棚が妙にたくさんあるってところ。
何これ、漫画が全然ないっ!全部文庫本かハードカバーだよ!信じらんない。

あ、これ、あいつがいってた江戸川乱歩って人だ。
夢野きゅうさく…?中島らも…?知らない人ばっかりだなぁ。こんな本ばっかり読んでるから何考えてるのかわからない系なんだよ、大槻は。

遠くで声がした。ただいまという若干無気力な声。

やっと帰ってきたか!

おじさまと何か話してる。

すると、ドタドタとものすごい音を立てながら大槻が部屋のドアをものすごい勢いであけた。

びくっとするあたし。

「おっ、お前何してんだよ!!!」

大槻…?何焦ってんの?

「ヘロー。」

ヘラッと笑って大槻に手を振ってみた。

大槻の顔が赤い。

「…どうしたの?」

「お、お前こそどうしたの、だよ!なんでうちに来てんだよ!」

「ああ、ごめんごめん、これ。」

きちんと畳んだブレザーを大槻に手渡す。