慣れた場所へ帰ったからか、タクシーから降りると私はうまく足に力が入らなかった。
恭は私の体を抱きあげて、私の部屋に運んでくれた。
布団の上に私の体をそっと横にすると、恭は私が履いていた靴を脱がして玄関に片づけてくれる。

私は一人になった部屋で、机の上に置いたままのダイヤが付いた指輪に視線を向けた。

私を見ながら涙を流していた嶺の表情が浮かぶ。

2年半。

あの人と離れてたのはどうしてなのだろうか・・・
そして、空白の半年は何だったのだろうか・・・

考えようとして再び頭痛がして目を閉じる。

眉間にしわを寄せていると、ふと温かいぬくもりに目が包まれた。

「少し眠れ。今はまだ考えなくていい。」
いつの間にか戻ってきた恭が私の目の上に自分の手を置いている。
「今は何も見なくていい。体を休めることだけ考えて。」
落ち着くその声に私はそのまま目を閉じて眠りについた。