「あの日・・・私が嶺と暮らしてたマンションを出た日・・・」
「あぁ」
少しして落ち着いた私たちは病室で話していた。

私はまだ体力が回復していなくて、ベッドの体を横たえたまま、ベッドの横にある椅子に座っている嶺と話している。

嶺はがっちりと私の手を握ってくれていた。

「私はお母さんのもとに向かったの。」
「・・・」
「全部わかってた。嶺が私のために先にお母さんに会ってくれたこと。きっと嶺に何かを言って脅した私のお母さんは、嶺からお金を受け取ったってことも。」
「・・・ごめん」
謝る嶺に私は首を横に振った。

「私はお母さんに、嶺にもうお金を要求したり、脅すのはやめてほしいって言いに行ったの。すぐに帰るつもりだった。」
「・・・」
嶺も初めて知る話に、真剣に私を見つめている。
握られた手から、嶺の手が冷えていて、緊張していることが伝わった。