「鈴」
部屋から呼ばれて私がベランダから声のする方を見るとそこには嶺が立っていた。
「眠れない?」
「うん」
私が緊張して眠れないことを察した嶺は手にカップをふたつ持っていた。
「俺も隣に行ってもいいか?」
「もちろん」
私の隣に嶺が寄り添うように座った。
「これ、ミルクティ」
よく作ってくれる嶺お手製のミルクティ。
「いい香り」
「熱いから気を付けて」
「ありがとう」
慎重に嶺の手からカップを受け取り、私はその香りを楽しんでから一口、口に運んだ。
「おいしい」
「よかった」
嶺はそう言って自分の口にも紅茶を運ぶ。