「嶺」
私が名前を呼ぶと嶺はすぐに振り返ってくれた。
夜になり、恭は先に客間で休んでいる時に私がリビングへ行くとひとりピアノを弾いている嶺がいた。

その曲が悲しい曲で、思わず演奏の途中なのに私は声をかけてしまった。

「目、腫れてんじゃん」
演奏を止めた嶺が困ったように笑いながら私の方へ近付いた。

「・・・」
私の瞳にそっと触れる嶺。
その手が緊張?遠慮しているのがわかる。

「ミルクティ、もう一度作ってくれる?」
私の言葉に嶺はとびきりの笑顔で答えてくれた。

「できるまでこれ、あててろ」
嶺は私をソファに座らせてキッチンで絞った冷たいタオルを持ってきてくれた。