「今の水瀬さんの状況は記憶の迷子です。失った記憶が戻り始めて、真実かそうではない空想の記憶かが分からなかったり、現在と未来と過去の記憶が入り混じっている状態です。」
「・・・」
「水瀬さん」
「はい・・・」
「大丈夫。我々が全力でサポートしますから。改めまして、これからよろしくお願いします。」
この年配の医師は穏やかで優しくて、それでいてしっかりと支えてくれそうな安心感があると私は直感で思った。

この医師とどんな時間を今まで過ごしてきたか全く覚えていない。

私は簡単にカウンセリングを受けてからアドバイスを受けて、診察を終えた。

「今までの薬は継続して処方をします。ただ、今不安定な状況にありますので、身近にいらっしゃる方が服薬の管理をしてください。それからなるべく食べられるときに好きなものでもなんでもいいので食べること。無理はしないこと。出かけるときは極力誰かと一緒か、何かがあった時のために、緊急連絡先のわかるものを用意して持ち歩くこと。」
「はい」
医師の言葉に私と一緒に恭も、神永という男性も返事をした。