「大丈夫。診察が終わったらすぐに戻ってくるから。それまで廊下で待ってる。」
私は渋々恭から手をはなした。

神永という男性と恭が部屋から出ると医師が私の隣に座った。

「水瀬さん、体調は今いかがですか?」
「少し頭が痛いです・・・。」
「そうですか。呼吸は?息苦しさは感じませんか?」
「・・・少し・・・」
「だるさや手足のしびれは?」
「だるいです。手足のしびれはありません。」
「そうですか」
医師は頷きながらカルテに文字をかきこんでいった。

「水瀬さんは、自分の記憶と向き合いたいとおっしゃっていました。知ったうえで未来へ進みたいと。」
「・・・」
「私からは記憶は戻らないかもしれませんが、うまく記憶や自分自身と付き合っていくことで、これからの未来が豊かになることを伝えました。心も治療をすれば治ることを伝えました。」
穏やかにゆっくりとした口調で話す医師。